何度かブログでも書いた映画『関心領域』・・・。
とうとう観ました。
ここからは音楽家目線で映画の感想を書きたいと思います。
これはね、
映画館では絶対に観れませんでした、私は。
何度か書きましたし、
映画評論を読むと分かるのですが
残酷な映像は一切ありません。
そこにあるのは「音」。
音から想像される恐怖しかありません。
その音も、ハッキリとは聞こえないんですね、これが。
まずまだご覧になってない人は
字幕で見ることをおすすめします。
ドイツ語のニュアンスがとても大切。
日本語吹き替えで見ると
細かいニュアンスが伝わないと思います。
この映画の最大の特徴は、
バックミュージックが殆どないこと。
あっても日常に溶けこみすぎて印象が薄い。
バックミュージックの代わりに、
日常音がセリフの後ろで聞こえます。
例えば
車が走る音とか
子どもが庭で遊んでいる笑い声、
小鳥の囀り・・・・。
そう、
その日常音に、
何語か判別できない言語の悲鳴や銃声が聞こえてくる・・・。
アウシュビッツ収容所と
たった一枚の壁を隔てて暮らす
家族目線の日常で聞こえてくる
(臨場感がありすぎる)生活音の全てが
言わば
バックミュージック的演出。
実際に映画を見ると
最初から最後まで誰かの悲鳴や銃声が聞こえてくるわけでは有りません。
それよりも
明るいオーケストラの演奏が塀の向こうからよく聞こえてきます。
だから終始暗いイメージの映画を想像すると少し違います。
しかし、
この明るいオケの演奏がなんなのか?と知ると暗い気持ちになる・・。
このオケの演奏は
収容者のクラブ活動的な娯楽ではありません。
貨物列車で運ばれてきた被収容者が
貨物駅(アウシュビッツ収容所終点)に到着した時に
収容音楽隊が演奏で迎えることが形式でした。
その演奏が多く聞こえる。
(到着後すぐ判別され価値なしとされた人は即、ガス室。オケの音→煙突から煙)
この演奏の意味を知るか知らないかで
また映画の理解度が変わりますね。
他には、
所長であるルドルフの誕生日を祝う音楽や
軍のブラスバンドによる演奏、
ホームパーティーなど、
要所要所で流れる音楽(控えめ)は
全て長調の明るい響きの音楽。
外の世界はこんなに豊かで明るく平和なのに
塀の中は・・・。
長調の音楽が逆に狂気的に感じた。
そしてこの映画の見どころ?聞きどころは、
映画冒頭の最初の3分。
3分間、黒い場面がただただ流れます。
その黒い画面と一緒に流れる音楽。
これが非常に不気味。
何かを想像させます。
例えば、ガス室とか、
収容所の暗い住環境とか。
何を感じるかは人それぞれ。
それと、
映画の最後のクレジットで流れる音楽。
これも不気味で恐怖。
繰り返される女性の悲鳴のような
ミニマルミュージック*。
(*音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽。)
この映画で伝えたいメッセージが
ギュッと表現されているよう。
何度も言いますが、
残忍・残酷な場面は一切ありません。
ホラー映画ではありません。
アウシュビッツ収容所の知識のある方で
想像力逞しい方は
「音」と「音楽」でやられます。
まぁ狂った時代でしたね。
国民が全体主義という破滅へ
向かった結果がもたらした人類の悲劇。
ナチスドイツが支配していたのは
たったの12年。
(1933年〜1945年)
12年といっても
アウシュビッツ収容所が利用され始めたのは1940年。
たった5年で
一体、何人の罪なき人たちが殺されたのでしょうか?
映画の場面で
火葬装置を売りに
他国(だと思う)のセールスマンが
アウシュビッツ所長の元に訪れるのですが・・。
(効率よく遺体を燃やせますよ、というセールス。)
狂ってる。
そして一番狂っているのは
収容所の隣で豊かに暮らしている所長の妻。
無関心は恐ろしい。
この映画は一言でいうと、
「音」と「音楽」で表現する歴史映画。
着眼点が斬新。
是非、観て下さい。
音楽はイギリスの作曲家のミカ・レヴィ(Mica Levi)。
女性です、非常に良い作曲家だと思います✨
