【音楽エッセイ】シューベルトと『魔王』

欧米はさておき、日本のアジア圏における義務教育での音楽の授業はなかなかレベルが優れている。

韓国なんかは日本の授業をモデルケースにしている。(しかし現在は韓国もレベル高いぞ〜。)

ベトナム人の友人はよく私にこう言う。

 「日本の学校教育はとても恵まれています。」

いや、ほんとその通りだと思う。。。

 ハンガリー人の友人はこういう。

「自分の子供は日本の軍隊のような教育下で学ばせたくない。でも行き届いた日本の教材は素晴らしいと思う。」

然り。

 

私の生まれ育った家庭では、幼き頃からクラシック音楽が流れているという家ではなかった。

だからクラシック音楽をどんどん好きになり聴き始めたのは中学校の吹奏楽部に入った影響からだ。

とはいえ、小学生の頃に受けた音楽の授業は好きだったなぁ〜。

やっぱり一番印象に残っているのはやはり、

 

シューベルトの歌曲『魔王』ではないだろうか。

 

Unknown

 

オーストリア出身のシューベルトは、大作曲家にしては珍しく謙虚で穏やかな人物だったらしい。

所謂「神童」ではなく、若くして大成したわけではないので(十分若くして成功したと思うが・・)、

嫉妬や悪意とは無縁で、伸び伸び創作活動をしていた。

然し乍ら、シューベルトが3歳の時に誕生した妹が翌日には死亡してしまい、

喜びが一転して悲しみに変わったことが幼な心に強烈な印象を与え、

彼の体調が悪化した25歳頃には(26歳で死去)早くも自分の死を予感し、

その恐怖に取り憑かれた日々を過ごす。

また幼少期、母親から聞かされたお伽話に出てくる暗い森や魔王、妖怪のイメージは、

恐怖と共に彼の心を魅了し、リート(歌曲のこと)作曲の際に、

大きなインスピレーションを引き出すきっかけとなった。

 

そんな彼の性格を反映した作品を沢山残してます。

非常に短い生涯でしたが、およそ600曲もの作品を書いたと言われています。

歌曲『野ばら』や『ます』は明るく無邪気な曲。

反対に『魔王』や『死と乙女』は恐怖や暗い印象をもたらす曲。

 

 

 『魔王』のストーリーは、

高熱を出した息子を医者に連れて行くため、

息子を腕に抱いて真夜中に馬を走らせる父親。

息子は熱にうなされ、幻聴に襲われる。

風に吹かれた枯れた葉や木々が、まるで魔王の囁きに聴こえる。

「お父さん、お父さん!魔王の囁きが聴こえる!」

「お父さん、お父さん!暗がりに群がる魔王の娘たちが見えないの?」

息子は怯える。

そして、結局途中で息絶えてしまう。

 

『魔王』はその歌詞の内容が非常に不気味で、闇夜の森を表現できている歌曲です。

 

それを小学校の音楽の授業で聴いた時、衝撃的だったなぁ。

「怖い!」より「「面白い!」と歌曲に、強いては「クラシック音楽」自体に魅了されたなぁ。

 

子供にいくら「美しいメロディーの曲でしょ〜?」と言い聞かせても、

そこに印象に残るエピソードがないと、よくわからない。

もちろん、耳馴染みの良い美しい曲は沢山存在する。

でも「あ、聴いたことある。」程度で終わってしまう。

どんな国のどんな作曲家が書いたかなどの知識は蚊帳の外。

だからこの『魔王』は、クラシック音楽入門にはすごーーーくいい作品じゃないかなぁ?

 

少なくとも私のクラシック音楽に対する心の扉は開いたぞ〜 🙂

 

こんなCDはいかがですか?

 

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フランツ・シューベルト歌曲集(このAmazonのページで上記数曲の歌曲も視聴できます)

 

聴いたことのある曲が何曲も収録されてます。あ、勿論『魔王』もね。

 

シューベルトの歌曲はBaliの音楽と同様、早朝か、

反対に真夜中に聴くことをお勧めします。

というか、個人的にその2つの時間帯に聴くと心に染みる。