先月の続き記事です。
→ 1)デジタルと感情
先月に引き続き、人工知能(以下AI)と音楽について。
前回から今日までのたった一ヶ月の間にも、
様々なAI関連ニュースを耳にした。
進化は想像以上に速い。
人間が発するエネルギーを、人は無意識に感じている。
留学時代、夏季講習を受けた時、こんな体験をした。
講習の最終日、全員が成果を発表する演奏会が開かれる。
講習会は様々な国から、様々な年齢の講習生が参加しているのだが、
その中でフルートのロシア人女性が舞台に現れた瞬間「あ、この人、多分上手い。」と
自信に満ち溢れた立ち振る舞いから感じた。
実際に演奏を聴くと、正直なところ「さほどでもない・・。」という感想だった。
が!?演奏後の態度、表情から凄まじいエネルギーを感じ、それに引き寄せられるかのように、
観客の私たちは拍手喝采。演奏も素晴らしいものに思えた。
これが俗に言う「オーラ」だろう。
舞台人はテクニック以上に、オーラによって人を魅了する。
要するに、ある程度までいくと芸術というものは、理屈だけでは語れない何かが存在する。
提供する側もされる側にも当然の如く感情が介入し、
互いにエネルギーを発している。
完成されたものだけに心揺さぶられるわけではない。
そもそもクラシック音楽はデジタル音楽と違い、
楽器と楽譜、そして演奏者がいれば成り立つ芸術だ。
機材や電気を使い、音量やバランスを調整する必要はない。
「機微」を読むスキルが重要である。
それに何百年も昔から存在する数ある音楽が淘汰され、
支持され残ったものがクラシック音楽なのだ。
また雅楽に必要な、師匠から伝承される「間」や「空気を読む」ことは、
AIには収集できない情報だろう。
楽器を練習して上達する喜びや達成感、
演奏会へ赴き舞台人の発するエネルギーやオーラを直接感じることに共通すること。
それは【能動性】。
受け身ではなく自ら行動し、肌で感じることの出来ること全て、
この先どれだけAIが進化してもなくならないだろう。
一番の理想は、人と協調し新たな音楽を開拓していくこと。
初音ミクも良いけど、演奏家のオーラを感じて忘れていた五感を研ぎ澄まして欲しい。