【音楽エッセイ】音楽家の一番のストレス要因をご存知ですか?

 

厳密に言うと、

「音楽家」というより「演奏家」にあたることですが、

(それを生業にしているプロ、もしくは音大生などが対象)

演奏家の一番ストレスに感じること、

それは

睡眠不足でも

人間関係でもなく、

「練習時間が十分に確保出来ないこと」

です。

勿論、個人差はあるし、

その人が感じる二番目のストレスと僅差の場合もあります。

が、絶対的に、練習が出来ないことは

重度のストレスです。

言葉の通り、重度。

例え5分でも10分でも

隙間時間を見つけて音出しをしたい。

寝る間を惜しんで練習したい。

これはスポーツ選手とかもそうなのだろうか・・・?

とにかく、

1分1秒練習したい!

 

音楽(芸術)には終わりがないと言われます、

特に演奏に真の意味での完璧はない。

楽譜通り間違えずに演奏出来たことが完璧ではない。

それが芸術です。

同じ曲でも20歳の時に演奏したものと、

50歳の時に演奏したものは

全然違う。

その年齢に応じた良さがあります。

フジ子・ヘミングの演奏を聴いたことのある方はお分かりかと思いますが、

彼女の演奏には、

テクニック以上のものがあります。

それは彼女のこれまでの経験、

感性、感情・・

その全てが音になって現れていると言われます。

私も初めて彼女の演奏を聴いた時に、

驚きました。

”ただ間違えず演奏することへの崇拝の念”

が、一瞬で覆された気がしたものです。

 

ただ芸術に関してよく誤解されることが、

「才能がある」=「努力はほどほどで十分」→(だから才能がある)

ということ。

ダイアモンドの石が磨かないと光らないように、

どんなに才能(センス)を持って生まれていても

磨かないと(練習しないと)才能は発揮されません。

だから

フジ子・ヘミングのような演奏が出来るようになるには、

様々な人生の経験を積む。

沢山の芸術に触れる。

以前に、

1分1秒でも練習をしないといけないのです。

それを演奏家は理解しているので、

隙間時間や遊ぶ時間を削って、惜しんで練習しています。

 

もう練習せずにはいられない。

(バイオリニストの諏訪内晶子もそう言っています)

したくてしたくてしょうがない。

出来ないことが最大のストレス・・・・。

「練習、練習、練習、練習・・・・・!!!」

頭の中で練習の文字が木霊する。

いや、ほんと真面目な話。

 

人によって練習出来る環境はそれぞれですが、

まず24時間音出し可能な

完全防音の家に住んでいる(スタジオがある)人は

稀でしょう。

だからこそ!!

1分1秒が惜しい!

例えば演奏以外の仕事から帰って

もしくは音大生が授業の後のバイトから帰って

夜の21時から2時間練習とか・・無理ですから。

そんな時間に音出しはNG!!

だから余計にストレスが溜まる!!

「じゃあいつ音出せるねん!」という風になる。

音大生の頃は、朝7時半から利用できる大学の練習室に朝練に行っていました。

7時20分頃には練習室を求める人の列が出来ていました。

(だいたい毎日、顔ぶれは同じでした😊)

そこで授業が始まるまでの1時間。

授業の空き時間1時間。

バイトに行くまでの2時間。

平均して計4時間は毎日練習していました。

(これ、少ないくらいかもしれないです。)

演奏家になってからは

毎日の練習の4時間確保はできなくても、

本番数週間前から

4〜6時間練習していました。

これらの時間が確保出来ないと

ストレスフル。。

その点、作曲家はいいですよ。

夜中でも作曲は出来ます。

(楽器を使う場合、電子楽器にイヤフォンになるが)

下手すりゃどこでも作曲出来る。五線譜さえあれば。

時間と空間には縛られない。

 

演奏家でいる以上、

この時間ストレスからは解放されません。絶対!!

でも耐久性は出来るんですねー。

あと、時間のやりくり練習のやりくりが上手くなる。

だから私は今も

とりあえず演奏家でいられています☺️

 

今はもうがっつり演奏家とは言えない、

元がっつり演奏家でその内情を知る私は言う。

演奏家は本当に偉い!

脱帽!

ある意味、とても神聖な仕事なのかもしれませんね。